立春を過ぎて、呼吸が変わるころ
立春を過ぎて、呼吸が変わるころ
立春を過ぎると、 寒さの中に残ったまま、 体や気分に、いくつもの変化が重なり始めます。
乾燥で、肌や喉がいつもより気になる。 年末年始の食事や生活リズムの影響で、 胃腸の疲れが抜けきらない。 寒さで体が縮こまり、 呼吸が浅くなっているのを感じることも。
大きな不調ではないけれど、 「なんとなく調子が万全じゃない」。 そんな感覚が、いくつも重なりやすい季節です。
そんなとき、 ラベンダーやオレンジ、 フランキンセンス、サンダルウッドといった よく知っている、やさしい香りに 自然と手が伸びる人も多いのではないでしょうか。
それらの香りは、 体を無理に変えるためのものではなく、 乾燥や疲れでこわばった感覚を、 そっとゆるめるための存在として 寄り添ってくれます。
この記事では
- 立春から春分に向けて起こりやすい5つの心身の変化
- それぞれの変化に寄り添う香りの選び方
- 科学的な根拠と、実践的な使い方
をご紹介していきます。
呼吸が浅くなったら|フランキンセンス・スイートオレンジ

寒さに慣れた体は、 気づかないうちに、 息を小さく保ったままになっています。
肩や胸が固まり、呼吸は浅く、速く。 それが続いていることに、自分ではなかなか気づけません。
帰宅しても緊張が抜けない。 深く息をしようとすると、少し違和感がある。
そんな感覚として、この時期の変化は現れやすくなります。
なぜ呼吸が浅くなるのか
嗅覚刺激は、大脳皮質での情報処理を経ず、 扁桃体・視床下部・脳幹といった情動・自律神経中枢に 直接作用する感覚であることが知られています。
そのため香りは、意識的なコントロールを必要とせず、 呼吸リズムや自律神経活動に影響を与えることが可能です。
精油の役割は、炎症や症状に対する薬理的な介入ではなく、 呼吸中枢と自律神経反射を、穏やかに再調整するための 感覚刺激として理解するのが適切でしょう。
おすすめの香り
◆ フランキンセンス
呼吸が浅くなったときに、広がりを感じやすい香り
◆ スイートオレンジ
緊張が続いた呼吸を、やさしく緩めたいときに
使い方
ティッシュやハンカチに1滴。 呼吸を整えることを目的に、1〜2分、静かに香るだけで十分です。
💡 ポイント
香りで「治そう」とするのではなく、呼吸が戻るきっかけをつくる感覚で使ってみてください。
なんとなく調子が整わない日|ラベンダー・フランキンセンス・ベルガモット

はっきりした不調はないのに、 どこか落ち着かない。 そんな日が、続くことがあります。
寒さや日照の変化、 年末年始から続く生活のリズム。 重なったままの疲れが、 表に出きらず、内側に残っているような感覚。
背筋を走る寒気や、 理由のはっきりしない不安定さ。 体が、これ以上傾かないように 静かに調整を続けている合図かもしれません。
無理に立て直そうとするより、 これ以上、崩れないために。 そんなときに、やさしい香りが選ばれることがあります。
なぜ不安定になるのか
ストレス下では、 炎症性サイトカインの産生が神経系と相互に作用し、 倦怠感、不安感、集中力の低下といった **いわゆる sickness behavior(病的行動)**が 現れることが知られています。
精油成分の一部には、 CB2受容体やGABA系への間接的な関与が示唆されており、 神経炎症を抑え込むというよりも、 過敏化しやすい環境を穏やかに整える刺激として 位置づけることができます。
この段階での香りの役割は、 不調を打ち消すことではなく、 身体がこれ以上傾かないための余白をつくることにあります。
おすすめの香り(ブレンド)
◆ ラベンダー
落ち着かない感じが続くときに、全体を包むような香り
◆ フランキンセンス
不安定な感覚を、深いところで支えたいときに
◆ ベルガモット
軽やかに、気分を切り替えたいときに
(各1滴)
使い方
夜、ディフューザーで10〜15分だけ。 香りを感じたら、そのまま早めに休むようにします。
💡 ポイント
長時間使い続けるのではなく、短時間で「今日はこれで終わり」という合図として使ってみてください。
眠れているのに疲れが残る夜|ネロリ・サンダルウッド

眠れているはずなのに、 朝になると、 回復した感じが残らない夜。
寒さが続く一方で、 日照時間は少しずつ伸び始め、 体の内側では、 次の季節への切り替えが進んでいます。
その途中で、 睡眠や回復に関わるリズムが、 わずかにずれたままになることがあります。
夜中に目が覚めやすい。 朝、体の重さが抜けない。 肌や髪の調子が、 整いにくく感じられることも。
無理に深く休ませようとするより、 回復へ向かう流れを、邪魔しないために。
なぜ回復が進みにくいのか
睡眠中の回復は、 単に睡眠時間の長さによって決まるのではなく、 自律神経系・内分泌系・免疫系の相互作用によって 調整されています。
季節変化やストレスの影響下では、 視床下部―下垂体―副腎系(HPA axis)や 自律神経の切り替えが不安定になり、 回復や組織修復に関わるプロセスが 十分に進みにくくなることがあります。
この段階での香りは、 睡眠を強く誘導する刺激ではなく、 情動系や自律神経系の過度な興奮を鎮め、 回復が始まりやすい神経環境を整える感覚刺激として 位置づけるのが適切でしょう。
おすすめの香り
◆ ネロリ
一日を終える合図として、気持ちを静めたい夜に
◆ サンダルウッド
休めない、眠れない感覚を、そっと静めたいときに
使い方
枕元のティッシュやハンカチに1滴。 就寝直前に香りを感じ、眠る前にはそっと遠ざけます。
💡 ポイント
眠らせるためではなく、一日を終え、回復に入る合図として使います。香りを感じたら、あとは体に任せてください。
香りが少し軽く感じられるとき|プチグレン・ローズマリー

同じ香りなのに、 重く感じていたはずの印象が、 ふっと変わる瞬間があります。
寒さはまだ残っているのに、 光や空気に、 わずかな変化を感じ始める頃。
体や気分が、 冬の重さだけを 抱えていたくなくなることがあります。
強く切り替えたいわけではない。 けれど、少し外に向かう準備は始めたい。
そんな感覚が、 香りの選び方に表れることもあります。
なぜ香りの感じ方が変わるのか
季節の移行期には、 **概日リズム(circadian rhythm)**の再調整が進み、 それに伴って自律神経系や内分泌系の協調関係も変化します。
香りは、 揮発性の芳香分子として嗅上皮に到達し、 嗅球を介して 情動や覚醒水準の調整に関わる中枢へと直接伝えられます。
春に向かう時期では、 過度な鎮静や刺激よりも、 覚醒と安定のバランスを微調整する芳香刺激が、 神経系に受け入れられやすくなります。
プチグレンやローズマリーのような香りは、 注意の向きや行動準備に関わる覚醒水準を 急激に変化させることなく、 次の季節へ向かう神経環境を静かに支える刺激として 位置づけることができます。
おすすめの香り
◆ プチグレン
動き出す前に、気持ちを整えたいときに
◆ ローズマリー(やさしいタイプ)
集中と落ち着きのバランスを取り戻したいときに
使い方
朝や日中、ティッシュやハンカチに1滴。 動き出す前に、軽く香りを感じるだけで十分です。
💡 ポイント
重い香りが急に軽く感じられたら、それは体が次の季節へ準備を始めた合図。無理に冬の香りを使い続けなくても大丈夫です。
役目を終えた香り

冬のあいだ、 気づけばそばにあった香りも、 季節が動き始めると、 少しずつ役割を終えていきます。
使わなくなる、というより、 必要なくなる。 それは、 体や感覚が、 もう次の段階へ進めるという合図なのかもしれません。
香りは、 何かを変えるためのものではありません。 不調を消すためのものでもありません。
ただ、 呼吸が戻るきっかけをつくり、 これ以上傾かない余白を保ち、 回復が始まるのを邪魔しない。
冬に手に取りたくなる香りは、 そのために、 しばらく伴走してくれる存在です。
やがて春が近づくと、 花の気配や、 まだ名前のつかないやわらかさに、 自然と心が向き、 華やかな香りを手に取りたくなることもあるでしょう。
必要なときにそばにあり、 役割を終えたら、 静かに離れていく。
香りとの関係も、 季節と同じように、 循環していくものなのかもしれません。
この冬、どの香りが、あなたのそばにあったでしょうか。
そして今、どの香りが、まだそこに残っているでしょうか。
役目を終えた香りを見つけることは、 新しい季節への準備が、 もう始まっている合図なのかもしれません。
この記事で紹介した精油
□ フランキンセンス
□ スイートオレンジ
□ ラベンダー
□ ベルガモット
□ ネロリ
□ サンダルウッド
□ プチグレン
□ ローズマリー(やさしいタイプ)
*初めて試す方は、まず1〜2種類から始めてみてください。
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